ふぉん・しいほるとの娘

休日にもアルバイトで稼がなければならないのは院生の悲しいさだめです。しかし一方、休日待機バイトでは呼ばれさえしなければ、まとまった時間が取れる良いチャンスともなります。この3連休連続待機中に、日本医家伝で興味を持ったシーボルトの娘「お稲」の一生を追った「ふぉん・しいほるとの娘(吉村昭著)」を読む事ができました。

本作は幕末にオランダ人と偽って日本の国情を探ったシーボルトが、遊女其扇に生ませた娘「お稲」の一生を追った小説です。お稲は幾多の苦難を乗り越え、日本最初の女医として産科医の道を極めようと努力しました。苦難に満ちた彼女や取り巻く人々の生き様がリアルに伝わってくる作品でした。また、彼女の生きた幕末〜明治維新期の情勢もふんだんに織り込まれています。この頃を題材にした小説は非常に多いためか、本作を読んでいても、お稲が一時期村田六蔵に学んでいたり、福沢諭吉と交流があったりなど、人間関係が縦横に広がっていくのが非常に面白く感じました。

お稲・荻野ぎん・吉岡弥生など江戸末期から明治初頭にかけて女医となった人々は、女性として社会に出て行くだけでも大変な時代に、医師の道を究めようとする情熱と努力にあふれており、伝記を読むと本当に熱い気持ちにさせられます。

ふぉん・しいほるとの娘(上) (新潮文庫)

ふぉん・しいほるとの娘(上) (新潮文庫)

ふぉん・しいほるとの娘(下) (新潮文庫)

ふぉん・しいほるとの娘(下) (新潮文庫)